放射線科のQOLは高い?放射線科医だからこその悩みも

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QOL(Quarity of Life)=生活の質

一般的にQOLはこのように訳されますが、医師同士の世界では概ね「プライベートな時間を保てるか」という意味で使われていることが多いと思います。

そのニュアンスで言えば、放射線科の「QOLは比較的高い」と言えると思います。
ただし、「じゃあ楽なのか」、「妊娠出産、子育てしやすいのかという意味ではない!!ことも述べていきたいと思います。

私は放射線科医を目指す前に放射線科についてネットで色々調べたのですが、メリットしか書かれていないことが多く、問題点やデメリットについてはわからず、いまいちイメージがつかなかったので進路で迷っている人がいれば現場にいる一個人の意見として参考にしていただければと思います。

*ここでの放射線科は「放射線診断科」のことを指します*

QOLが高い(と言われる)理由

①基本的に画像診断がメインの業務になるので、検査が終わり次第、必要量読めば帰宅できる
また、通常病棟業務はないので内科や外科のように終業間近になって緊急入院や家族への説明、日中終わらなかった分の残業といった帰宅時間が予定より大幅に遅くなるという確率は他の科に比べると低いです。ただし緊急IVRやドレナージなどに対応する場合は例外です。

当直が少ないまたは無い。上記の通り当直は基本診察業務ですので無いところが多いです。
ただし、「今のところは」です。というのも読影当直行っている病院は既にあり、更に管理加算と呼ばれる画像診断における診療報酬制度があり、なかでも「管理加算3(参照:JCR制作 japan radiology assessment2020)」夜間・休日読影に対する診療報酬制度です。つまり、夜間にCT、MRIを読影する、いわゆる当直読影です。

人員が十分な病院においてはこの制度を導入して当直読影を行っているところもあるようです。夜間でも読影医がレポートを付けてくれるというのは救急・臨床医からすると心強いと思いますので需要は高いでしょうし、年々病院は経営改善に対して積極的になってきていますので、今後増えていく可能性は十分あります。
また、当直ではありませんが緊急IVRのためのオンコールはあります(無い病院もある)。

上記のように放射線科医を取り巻く環境は他の忙しい科に比べると今のところQOLが高いです。
ただし、楽かと言われると「そうでもない」です。

放射線科医の一日とは?

時々同期の他科医師に冗談半分で「ずーーーーっと座って読影しているからいいよな」と言われるのですが、

ずっと座っている=楽してる ではないです!!
感覚的に言うと「毎日ずっと受験勉強でひたすら問題を解き続けている感じ」が合っていると思います。読影は主に「どこにどんな病変が隠れているのか、その病変は何なのか」といったことを「見つけて」→「短時間で答えを導き出して」→依頼医に向けて「レポートする」業務です。これをひたすら繰り返しています。
内科や外科だと緊急入院、治療/手術、その日の外来・診察人数などによって余裕のある日と忙しい日があり、緩急がありますが放射線科医の場合は他科に比べると緩急は無く、一定の忙しさの中で毎日過ごしていることが多いです。もちろん、日によって多少検査数の変動はあるので「少し楽に感じる」という日はありますが概ね一定の忙しさが維持されます。
多忙を極めることは確かに少ないのですが、緊急IVR対応、造影剤アレルギー対応といった急を要する事象が発生することはあります。
IVRは何時間もかかることがありますし、造影剤アレルギーもアレルギーそのものの対応以外にカルテ記載、重症の場合は造影剤業者への連絡・報告書作成などで午前or午後まるまる対応で終わってしまうことだってあります。
そして当然こういった業務にも時間を割く分、只でさえひっ迫している読影はこれらの合間に何とか終わらせなければいけません。
働く病院に依るとは思いますが、わたしが経験した職場では「今日はのんびりだな~」って思ったことはほとんどないです。

放射線科医が多忙になっている理由は?

あまり知られていないのですが
国別100万人当たりのCT保有台数、MRI保有台数
日本:    CTー107.17、MRIー51.69
アメリカ:  CTー41.05MRIー38.12
G7平均:    CTー25.2、MRIー25.8
OECD関連国:CTー25.4、MRIー15.2
(2014年時点 出典:OECD.stat)
アメリカを追い抜いてダントツ世界トップクラス!!なんです。やや古いデータではありますが、数年前からずーーーーっとこの状況が続いています。
対して日本の放射線診断医は現在6500人ほどで対人口比で米国のたった1/4だそうです。
そして1人当たりの読影件数も世界トップなのだそうです(参照:JCR制作 放射線科医不足チラシ)。
数字が物語るように現在の放射線科は昔に比べて「多忙」となっていることは確かです。
台数増加のほかに「多忙」となってきている要因は以下のことが考えられます。
CT,MRI台数以外に多忙になっている要因と考えられるもの

①検査の高速化⇒1日当たりに可能な検査数増加


②CT,MRI検査依頼のハードルが低くなっている


③検査できる部位・範囲の拡大⇒1検査あたりの読影枚数増加


④精密な画像が得られるthine slice CTやダイナミックCTが当たり前のように撮れるようになってきている⇒1検査当たりの読影枚数の急増(1検査100枚ちょっとだったものが1検査数百から数枚に及ぶことも)


⑤患者数の増加


⑥経営収支の問題(管理加算含む)で検査数を減らせない。

こういった理由から増加してきていると考えられます。
これに伴って画像診断医が増えていればいいのですが、急速な検査数増加に全く追いついていないのが現状です。そもそも日本では医師の間ですら放射線科医が何をしているのかよく知らない人が結構います。
また最近ではAIなどで放射線科医の将来性に対する不安から選びにくいと感じる研修医も見かけます。
医師の専門分野選択は医師人生の中でも非常に大きな選択になるので、「将来性」が見える科には希望者が集まりやすくなります。この点では放射線科は難しい時期に差し掛かっていると思われます。
ただ、AIとの親和性が高いという見方もあり、プログラミングなどに興味がある人が放射線科を選ぶというパターンも出てきています。

 

QOLはいいのになかなか人数が増えない。そしてあまり実態を知られていない。。。。

そんなレアキャラ(?)になってしまった放射線科医ですが、どんな人が多いか考えてみました。

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