診断専門医筆記試験の得点源かつ関門となる「核医学」パートについて筆記試験対策まとめを作成しました。
試験の中でも大きな割合を占める分野ですのでしっかり押さえておく必要があると思いこのページを作ってみました。
また、核医学の画像に慣れていないと、苦痛を強いられる分野ですが、少しでも苦手意識を取り除いて「核医学検査」が理解しやすくなれば今後の読影にも役立てることができるんじゃないかなという思いもあります。
得点を取りに行くというより、理解を深めるためにこのまとめページがお役に立てると幸いです。
*内容が診断専門医試験対策②ページのものと一部重複しているところがあります。
*主に2015~2019年の問題からまとめました。
2020年は出題傾向が変わった!?
いきなりですが、先に書いておいた方が良いかと思い敢えて最初の見出しにします。
まず、2020年試験は難化した印象があります。
2020年の場合は口頭試問が無くなり代わりに記述問題となっていました。2021年の試験においては2020年のような問題傾向でくるのかは予測不能です。
ただ、いずれにしても過去問ベースで対策を進めるしかない部分があるので、少しでも勉強の効率を上げていただくためこのページにまとめておきます。
頻出問題対策①「この核種は何か?」問題
頻出かつ割れ問になりやすいのがこの「核種」を当てる問題です。
この”核種問題”にはいくつか種類があります。
- プラナー像やSPECT画像から純粋に核種を問う
- 選択肢のなかに核種が出てくる
- 問題文にも核種は記載なく、核種を自分で判断したうえでその画像や検査知識を問う
(ちなみに2019年は核種問題のオンパレードでした。)
以下に各1~3の問題についてまとめてみました。
1.純粋に核種が問われる問題
2015-2019年では毎年1題は出題
最も頻出なのは「腫瘍シンチ」です。
代表的な核種(FDG-PET除く)としては
- 67Ga-クエン酸
- 201TlCl
- 123I-MIBG
画像はプラナー全身像での出題が多い
対策
①問題文を読む
問題文がヒントとなっていることが多いです。「どこの、何を評価しようとしているのか」が、問題を解くカギになります。
問題文を疎かにしていきなり画像に飛びつくと「?」となりやすくなります。
特に腫瘍シンチでは重要。「どこの腫瘍」を評価したいのかは大切です。
②どこが描出されているか
病変の部位、心臓、肝臓、腸管、腎臓、骨髄、筋肉など、どこが描出されているか。
これらがヒントとなることが多い印象です。
ただし厳密にやりすぎると絞れなくなることがあります。問題文のターゲット部位と選んだ核種の検査意義に矛盾がないか確認しましょう。
「各腫瘍シンチの特徴」を押さえておくと解答に近づきやすくなる
以下、代表的な腫瘍シンチ3種類に関して、問題を解くうえで押さえておいた方が解きやすくなりそうな部分、着目点を簡単にまとめておきます。
あくまで過去問を解くうえでの要点を書いただけなので、これだけでは試験勉強にはならないです。必ず核医学本を併用しながらそのほかの内容も押さえておいてください。
①67Ga(ガリウム)
◆広域の腫瘍シンチグラムです。
◆生理的集積が分かりやすいところ(私の主観的な印象込みですが…)↓
- 鼻咽腔や耳下腺(時に涙腺)
- 骨・骨髄に集積する(骨シンチほどではないが、脊椎はよく見えていて、長管骨もうっすらみえている印象。).
- 肝への集積も目立つ
◆病変への集積
様々な腫瘍に集積しますが、、、
悪性リンパ腫ではより高度に集積することは特に押さえておく。
また炎症シンチとしても利用される核種である
<Gaシンチグラムの主要な適応疾患=「SLIM」>
- S=sarcoidosis(サルコイドーシス)
- L=lymphoma(悪性リンパ腫)
- I=inflammation,infection(炎症,感染)
- M=malignant melanoma(悪性黒色腫)
一段階目の専門医試験でも頻出の知識です。診断専門医試験でも押さえておいてください
②201TlCl(塩化タリウム)
◆広域の腫瘍シンチグラム
◆生理的集積
甲状腺、心筋(心筋シンチでも使用)、肝臓、筋肉、小腸など
◆病変への集積
- 骨肉腫に高度に集積
- 他に甲状腺癌や脳腫瘍などなど
③123I-MIBG
◆ノルアドレナリンと類似した構造
◆生理的集積
唾液腺・鼻腔、甲状腺、心臓、肝臓、膀胱など
◆病変への集積
- 褐色細胞腫
- 傍神経節腫瘍
- 神経芽腫(小児)
*正常像の集積部分がTlClと重複する部分がありますが、集積する病変自体は先述のGaやTlClに比べて特徴的な部位に発生する腫瘍なので、鑑別するうえで問題文と病変の位置は非常に重要になる核種です。
2.選択肢のなかに核種が出てくる問題
ここ最近で頻出となってきている出題のされ方です(あくまで「選択肢」であって正解という意味ではありません)。
問題文と画像が提示され、核種は記載されておらず、検査や画像所見の選択肢のなかに核種も出てくるパターンです。
1.の純粋に核種を問う場合と異なり、出題されるシンチの種類は多彩です。
このため対策がやや難しいですが、全身プラナー像だけから判断するのと違って、心筋血流シンチやセンチネルリンパ節シンチなど、検査自体が特異的な場合が多いので各部門で使用されている核種は把握しておきましょう(1段階目の専門医試験の時の知識みたいですが)。
ちょっと似ていて迷わせる問題への対策
画像が似ていてぱっと見だとどっちだ?となりがちな検査の見分け方
異所性胃粘膜シンチ(Tc-O4¯)と消化管出血シンチ(99mTc-HSA-D)
問題文は大事と述べてきましたが、この「異所性胃粘膜vs消化管出血シンチ問題」についてはやや例外的かなと思います。問題文の主訴だけ見ると消化管出血シンチだ!と思い込みそうな内容で…しかし年齢が若年だったり、またシンチ画像から見分けることが可能です。
<見分けポイント>
1.異所性胃粘膜シンチのTc-O4-は「胃酸」のCl-と同様の動態を示すので、「胃」がよく描出されています。あと膀胱も排出経路としてよく描出されています。
2.消化管出血シンチは血液プールが豊富な部分に集積するので、心臓、肝臓。脾臓はよく描出されます。排泄経路は腎や尿路(つまりは膀胱)。血管も当然描出されますが、過去問画像ではTc-O4¯でもうっすら映っているような時があったり鑑別点としてはどうかなーという感じです。
そしてもう1点。。。。画像の下端に撮像の経過時間が書かれていることがあります。
異所性胃粘膜シンチではおおよそ30~60分までですが、消化管出血シンチでは通常30分~数時間かけての検査とより長い時間をかけている点。ただこの表記されている経過時間だけで解答を考えるのは危険なので、上記した画像そのもので判断する方が無難だと思います。
3.問題文にも核種の記載なし。核種は自分で判断したうえでその画像や検査知識を問うもの
先述の2題についてはある程度対策が可能ですが、このパターンは核医学が苦手な方には一番厄介かと思います。
ただし出題頻度は少なめです。
問題文には核種の記載なし。画像が提示されており、選択肢にはその画像の所見、行われた検査自体に関する知識が問われています。
パターン1と2の合わせ技みたいな出題です。
頻出問題対策②よく出題される核種、検査について
核種を当てる問題以外にも毎年のように出題されている核医学検査があります。それは…
- 脳血流シンチ、DATスキャン(123I-ioflupane)、I-MIBG
- 心筋シンチ
- 骨シンチ
- FDG-PET
です。各シンチグラフィについて以下に簡単にまとめておきます。
脳血流シンチ、DATスキャン
診断専門医試験対策②ページでも書いていますが、核医学の最初の問題でほぼ毎年出てきており、対策は必須です。
核医学分野の最初の2問で出題されている傾向
認知症の鑑別が頻出
必要な知識
基本として正常像は把握しておきましょう。
<脳血流>
- 主な核種:123I-IMP、99mTc-ECD、99mTc-HMPAO
- どこが集積低下しているかが分かること、血流低下部位と認知症との関連
- 特徴的な所見を呈する認知症・関連疾患:アルツハイマー病や正常圧水頭症など
<123I-MIBG>
心臓集積低下する認知症:Parkinson病、Lewy小体型認知症
<DATスキャン>
集積低下する病態:Parkinson病、Lewy小体型認知症、進行性核上性麻痺、多系統萎縮症、大脳皮質基底核変性症
DATスキャンの画像診断お助けサイト、本
下記サイトや本にもDATスキャンの集積パターンが画像で掲載されており、役立ちました。
①メジフィジックス株式会社サイト
既に試験対策おススメの本のページでも紹介させて頂いているので詳しいことは割愛しますが、ネット上ですぐにこういった知識を得ることができるのはありがたいです。
②核医学検査ハンドブック
本来は放射線技師用に出版された本らしいですが、検査の要点がまとまっていて知識が整理しやすいなと感じました。
特に親切なのが(全てではありませんが)集積部分を矢印等で示して部位を記載してくれているところです。
ただ、既に「わかりやすい核医学」&「核医学ノート」の2冊をそろえている場合は絶対購入すべきとは言いづらいです。
本屋で検証するか、図書館がある施設で置いてあれば一度借りてみるのもアリだと思います。
最後に
以上、核医学分野について簡単にまとめてみました。「得点源になりうるけれども苦手」という声が多く聞かれるだけに重点的な対策が必要と思われます。
頻出核種の正常像は少なくとも把握しておく必要があります。またその核種で何が評価できるのかも覚えておいた方がいいと思います。
この記事だけで完全に対策が出来るわけではありませんが、「核医学の勉強がとにかく苦痛!」というところから、少しでも「核医学って面白いな」という気持ちになると試験勉強もはかどると思います。
それでは、皆さん試験勉強頑張ってください。